感動の卒業式が終わって、
私たちはお祝いのお食事会をした。
美味しいお料理を口にしながら、
私は凛次郎から思い掛けない話を聞いた。
それは、
ゼミやインターンシップの応募の動機についてだけど。
「小学生の時にクラスの揉め事から嫌がらせを受けて、
その時、家族を守りたいと思ったから」
そんなことを、
大学3年にも4年にもなって、
純粋だけど子供じみたことを正直に書くなんて、
びっくりした。
でも、私はすごくすっごく嬉しかった。
凛次郎が小学校5年生の夏休みのことだった。
当事者でもない凛次郎が、
クラスの揉め事に巻き込まれて、
私はひとり悩んでいた。
ひとりでずっとずっと考えた。
凛次郎は、私を心配そうに、
そばでずっとコブクロの「蕾」をピアノで弾いていた。
その曲は亡き母親を歌ったものだと知ったのは、
だいぶん、経ってからのことだった。
私は陰で保護者に根回しをするような卑怯な手は使わずに、
正々堂々と皆の前で真実を語ったけど、
陰では私に味方をしてくれても
正面から私に同意をする保護者はなくて、
とても孤独だった。
結局、その時の学校の対応に不信感を覚えた私は、
凛次郎を転校させることにした。
次の学校は、山の高い所にあった。
学校の回りの道は狭くて、
車で送り迎えをするのに、迷惑を掛けずに、
安全に車の乗り降りさせる場所を、
私は歩いて一生懸命、探した。
お盆を過ぎた残暑厳しい夏のことだった。
教師に対する悔しさ、
ずるい保護者達への腹立たしさ、
私は汗と涙で顔をくしゃくしゃにしながら、
山道を登ったり下りたりした。
あの時の涙は誰にも分かってもらえないと思うけど、
今でも思い出すと心が泣く。
でも、
凛次郎が弁護士を目指す理由が未だ変わってないと知って、
あの時の涙は無駄にならない気がした。
凛次郎が弁護士になりたいと思ったのは、
名誉やお金みたいな、
そんな安っぽいもんじゃないのだ。
嫌がらせをされて、
おばぁちゃんまでをも悲しませて、
大好きなおばぁちゃんを助けたいと思った、
小学5年生の純粋無垢な気持ちなのだ。
弱い人を助ける弁護士になって欲しいと、
本当に心からそう願った。
桜の花が満開 TBS近くにて 2019.3.25