度胸試しが目的で、合否は気にしてないつもりだったのに、
いざ発表の日になるとやっぱり気になった。


当の本人は合否を確かめないと言う。
私は受験番号も知らず確かめることも出来ない。
...発表翌日の郵便を待つしかない。
郵便が届けば合格。


合格しても行く気がないのだから、
合否なんてどうでもいいようなものだけど、
通ると通らないとじゃぁ気分が違う。
げんが悪くなるような気もする。
行く気がないと言っても、行くかもしれない。
あー、やっぱり、どうか合格していますように。


その日、私は仕事から帰ると落ち着かなかった。
いつも午後からの郵便は午後2時半くらいだ。
あと10分足らずで2時半。


(あー、神様、仏様、どうかどうか合格させてください)
と、気が付いたら私は一生懸命お願いしていた。


すると、インターホンの音が鳴った!


私の顔はたちまち笑顔になり合格を確信した。
慌てて玄関を開けると、そこには思った通り、
郵便配達の4,50代のお兄さんが立っていた。


そして、郵便配達のお兄さんは、
「印鑑をください」と言って分厚い郵便物を差し出した。


インターホンの音を聞いた時は余裕の笑顔だったのに、
郵便配達のお兄さんが持っている分厚い郵便物を見た途端、
私は涙が溢れて泣きながら言った。


「これを待ってたんです!ずっと待ってたんです。
ありがとうございます!ありがとうございます!」


そして選挙の時に候補者が両手で握手をするように、
私も両手で郵便配達のお兄さんの手を握りしめながら、
「ありがとうございます」とお礼を言っていた。
合否なんてどっちでもよかったはずなのに。


すると、郵便配達のお兄さんは私に優しい眼差しで
「おめでとうございます!
僕たち(郵便配達員)のようにならないようにいい人生を送ってください」
と謙遜しながらお祝いの言葉をくれて、
私はまだ泣きながら、
そして、やっぱり郵便配達のお兄さんの手を握りしめながら、
「ありがとうございます。ありがとうございます」
とお礼を繰り返していた。


世間の優しい風にふれて心から嬉しかった。
優しい気持ちがありがたかった。
私もまわりの人に優しくなれるような気がした。


まだ季節は春には程遠い頃、私は一足早く春を感じていた。







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記事とは関係ありません。2015.2.19 ウィーンの森にて





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